アジサシがとんでいく

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クールな農業用水路

JR南武線の久地(くじ)駅にある久地円筒分水(くじえんとうぶんすい)に行ってきました。


ここには二ヶ領用水と呼ばれる、江戸初期に多摩川で最古の農業用水路があります。

 

1941年(昭和16年)に円筒分水が築かれる前は水量をめぐる争いが絶えませんでした。


いちばん大きな争いは溝口水騒動(みぞのくちみずそうどう)と呼ばれていて、1821年(文政4年)に発生した干ばつの際に、二ヶ領用水下流の農民が用水を堰き止めたとして、稲毛領溝口村の名主鈴木七右衛門宅を襲撃するまでの事件となったそうです。


この久地円筒分水の設計をしたのは、当時の神奈川県多摩川右岸農業水利改良事務所長の平賀栄治(1892~1982)さん。各用水路の灌漑面積に応じた一定の比率(7.415 : 38.471 : 2.702 : 1.675)で水を正確に分け流しているそうです。


仕組みは以下のとおりです。


1.サイフォンの原理を利用して円筒中心部に水を導いて、円筒状の設備の中心部に用水を湧き出させる。


2.円筒外周部から水が落下するときに、その水が円筒外縁部に設けた仕切りで分配される。


この方式により平地の用水路でも正確な分水を実現できたため、以降、同様の方式のものが全国各地に造られるようになったとか。


戦後日本を占領した米軍も視察に訪れ、この設備は高く評価されました。平成 10(1998)年には川崎市で初めての国の登録有形文化財に指定されました。


平賀さんの偉業をたたえる記述を久地円筒分水のすぐそばで目にすることができます。